02.11.2004
仄暗い記憶の底から 6 バラナシの夜
あなたは気を失ったことがあるだろうか? 僕はインドの聖地、バラナシで気を失った。ガンジスの滔々たる流れを前にして、インド世界の神秘に打たれたためだ………。なんてウソポ〜ン!
蔵前仁一という人の書いた「ゴーゴーインド」という本を読んで、インド旅行の夢が僕の中に芽生えた。ヒッピーの憧れた国、カレーの国、その神秘の世界に触れてみたい。インドの旅は僕の生き方にとてつもない変革をもたらすに違いない……そう思ったのは嘘じゃない。
でも実はもうひとつの目的があった。……ドラッグだ。インドではわりとカジュアルに大麻の吸引が行われているという。どのようなものなのかトリップしてみたかった。日本ではうかつなことはできない……しかしインドでなら……。
インドに着いて数日後、意外に早くチャンスは訪れた。バラナシに「クミコハウス」という有名な日本人宿がある。ドミトリーで一泊100円ぐらいだったろうか。宿泊客はほぼ100%日本人なのだが、案の定そこに長逗留している日本人たちは夜になると車座になって大麻の回し飲みをはじめた。好奇心を抑えきれない僕は「まぜてもらっていいですか?」とかなんとかいいながら、彼らの輪の中に入り込んだ。
たしかタバコをほぐして中に大麻を混ぜてまた紙で包んだものを吸ったと思う。「濃いコーヒーを飲みながらきめるのがいいんだ。」とかいって、僕の前にもきつそうなコーヒーが配られた。吸い方を教わって回ってきた大麻タバコを吸い込んだ。一回目、二回目……、何も変化がなかった。しかし三回目に回ってきた大麻の煙を吸い込んだ直後、急に目が回りはじめた。
どうしたことだろう? これは耐えられないかもしれないと思って、僕は席を立って自分のベッドに行こうとした。しかし、吐きそうな気がしてトイレに先に行かなくては、と思い振り返って歩きはじめたが、スーッと意識が失われて床の上に倒れ込んでしまった。
気が付くと同室の人たちが僕の顔を覗き込み、体をさすったり、舌を噛まないようにと僕の口に指を突っ込んでいた。結構こんな風にして死ぬやつがいるらしいのだ。あとから聞いた話では、僕は白目をむいて卒倒していたらしい。なんともぶざまな話だ。
バンコクからカルカッタに着いて三日目にカゼをひいた。なれない旅で体力が落ちていたし、意外に十月のインドの夜は寒かったのだ。熱っぽい体で二等寝台車に乗ってバラナシに到着し、宿の主のインド人のおじさんに医者を紹介してもらい、とてつもなく強力だというインドの薬を処方してもらっていた。普段から酒もタバコもやらない僕が、体調不良の上、強力なカゼ薬を飲み、濃いコーヒーをすすった上に大麻をすったのだ。考えてみれば無茶なことをしたものだ。
薬物の世界に人並みの興味を持っていた。ヒッピームーブメントの時代からそこには反体制的なモメントがあったからである。しかし僕が旅で出会った薬物使用者たちは、みんな深みに欠けるというか、閉鎖的で、自分勝手な人たちのような気がした。なんというか僕の求める世界とは違うのだと、少しがっかりしたんだ。倒れた僕を介抱してくれた人たちには感謝しなければならないけどね。
蔵前仁一という人の書いた「ゴーゴーインド」という本を読んで、インド旅行の夢が僕の中に芽生えた。ヒッピーの憧れた国、カレーの国、その神秘の世界に触れてみたい。インドの旅は僕の生き方にとてつもない変革をもたらすに違いない……そう思ったのは嘘じゃない。
でも実はもうひとつの目的があった。……ドラッグだ。インドではわりとカジュアルに大麻の吸引が行われているという。どのようなものなのかトリップしてみたかった。日本ではうかつなことはできない……しかしインドでなら……。
インドに着いて数日後、意外に早くチャンスは訪れた。バラナシに「クミコハウス」という有名な日本人宿がある。ドミトリーで一泊100円ぐらいだったろうか。宿泊客はほぼ100%日本人なのだが、案の定そこに長逗留している日本人たちは夜になると車座になって大麻の回し飲みをはじめた。好奇心を抑えきれない僕は「まぜてもらっていいですか?」とかなんとかいいながら、彼らの輪の中に入り込んだ。
たしかタバコをほぐして中に大麻を混ぜてまた紙で包んだものを吸ったと思う。「濃いコーヒーを飲みながらきめるのがいいんだ。」とかいって、僕の前にもきつそうなコーヒーが配られた。吸い方を教わって回ってきた大麻タバコを吸い込んだ。一回目、二回目……、何も変化がなかった。しかし三回目に回ってきた大麻の煙を吸い込んだ直後、急に目が回りはじめた。
どうしたことだろう? これは耐えられないかもしれないと思って、僕は席を立って自分のベッドに行こうとした。しかし、吐きそうな気がしてトイレに先に行かなくては、と思い振り返って歩きはじめたが、スーッと意識が失われて床の上に倒れ込んでしまった。
気が付くと同室の人たちが僕の顔を覗き込み、体をさすったり、舌を噛まないようにと僕の口に指を突っ込んでいた。結構こんな風にして死ぬやつがいるらしいのだ。あとから聞いた話では、僕は白目をむいて卒倒していたらしい。なんともぶざまな話だ。
バンコクからカルカッタに着いて三日目にカゼをひいた。なれない旅で体力が落ちていたし、意外に十月のインドの夜は寒かったのだ。熱っぽい体で二等寝台車に乗ってバラナシに到着し、宿の主のインド人のおじさんに医者を紹介してもらい、とてつもなく強力だというインドの薬を処方してもらっていた。普段から酒もタバコもやらない僕が、体調不良の上、強力なカゼ薬を飲み、濃いコーヒーをすすった上に大麻をすったのだ。考えてみれば無茶なことをしたものだ。
薬物の世界に人並みの興味を持っていた。ヒッピームーブメントの時代からそこには反体制的なモメントがあったからである。しかし僕が旅で出会った薬物使用者たちは、みんな深みに欠けるというか、閉鎖的で、自分勝手な人たちのような気がした。なんというか僕の求める世界とは違うのだと、少しがっかりしたんだ。倒れた僕を介抱してくれた人たちには感謝しなければならないけどね。
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